長梅雨のあとには、暑くて長い夏の到来…。ステイホームが続く今年の夏は、家の暑さ対策も大切です。
気象予報士・千種ゆり子さんが、猛暑の実態をデータで見ながら、熱中症など暑さ対策としての「植物」パワーについてお話します。グリーンカーテンや屋上緑化、打ち水など、涼し気なアイディアで暑さを乗り切りましょう。
場所によっては50℃以上⁉ 宇宙からも日本の酷暑が見えた
一年で最も暑い8月上旬、うだるような危険な暑さで”気温的にもステイホーム”な最近です。毎年熱中症が原因で亡くなる人は1000人弱(過去9年平均)、記録的な猛暑と言われた2年前は1500人の方が熱中症で命を落としています。
熱中症も広い意味での気象災害と言えます。35℃以上の猛暑日は60年ほど前に比べて2倍に増えています。
下の画像はJAXAが運用する気象衛星が観測した地表面の温度。
東京、名古屋、大阪など、都市部はどこも真っ赤っかで、場所によっては、地表の温度は50℃以上になっています。
でもよく見ると、ところどころ周りより気温が低くなっている所があります。
例えば埼玉県・東京の県境付近。ここは、狭山丘陵です。「トトロの森」と呼ばれることもある狭山湖・多摩湖周辺の森林地帯です。
さらに東京都心でも、小さいですが、少しだけ気温が低い場所があるのがわかりますか?
皇居です。実は気温が低くなっているエリアは、緑(植生)の地域ときれいに一致しています。
今夏から、環境省が「熱中症警戒アラート」をスタート
今年から環境省と気象庁は「熱中症警戒アラート」の試験運用を始めました。
「暑さ指数」が33℃以上でアラートが出されます。
暑さ指数とは「気温:湿度:輻射熱」を「1:7:2」で考慮したデータで、
“私たちが感じる暑さ”に近いとされています。
まず湿度の割合の大きさに驚くと思いますが、
気温よりも「輻射熱(ふくしゃねつ)」の方が影響が大きいのも、意外なポイントかもしれません。「輻射熱」とは地面からの照り返しのことです。
屋上緑化やグリーンカーテン…、「植物」こそ暑さの緩和に効果的!
夏の暑い時期、気温が35℃程度でも、地表の温度は50℃以上になってしまうというのは、先ほどのJAXAの衛星からのデータでも示されていた通りです。
では、例えばビルの屋上に植物を植える「屋上緑化」を行った場合、屋根の温度はどうなるのか、ということを示した実験データが興味深いです。
例えば、気温が33℃まで上がった日に屋根の温度を観測すると56.8℃まで上がっていましたが、芝では33.9℃、複数の植物を植えた花壇では31.8℃までしか上がりませんでした。
ちなみに遮熱塗料でも40.6℃まで上がってしまったことから、植物が暑さの緩和に役立つことがわかります。
植物は直射日射を遮る効果があるのはもちろんですが、もう1つ、屋上緑化や壁面緑化が涼しい理由があります。
それは葉で行われる「蒸散」がポイントです。
「蒸散」とは、葉から植物の水蒸気が蒸発することですが、水は蒸発する際に、周りの空気から熱を吸収する役割をします。
こうなると、空気の温度が下がるんですね。中学1年の理科で習う言葉で、これを「水の相変化」といいます。
「打ち水」も同じ原理で、撒いた水が蒸発する際に空気から熱を奪ってもらおうという算段なのです。空気の熱を水が奪って、水蒸気の中に閉じ込めるようなイメージで、子どもへの説明には「打ち水」のほうがわかりやすいかもしれません。
ちなみに上記の実験データは屋根一面をしっかりと植物などで覆った場合の結果ですので、ご家庭でグリーンカーテンを作る際もなるべくしっかりと緑が生い茂る植物をオススメします。
大手種苗メーカー・サカタのタネによると手間、成長、病気や虫に強い等の観点から、花なら西洋アサガオ、野菜ならゴーヤがグリーンカーテンにオススメだそうです。
種蒔きの時期は4月下旬~5月頃なので、来年はぜひ試してみてはいかがでしょうか?
Have a try!
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- 近所の緑が多い公園や森林に出かけて、涼しさを体感してみる
- 熱中症警戒アラートを活用して、熱中症を防ぐ
- 来年は家の壁などで、グリーンカーテンを育ててみる
気象予報士/千種ゆり子(ウェザーマップ)
お天気キャスターとしての出演のほか、新聞コラム執筆から地球温暖化に関する講演活動など幅広く活躍中。テレビ朝日「スーパーJチャンネル」毎週土曜日のお天気コーナーを担当。桜好きが高じて、今春から”桜Youtuber"として「気象予報士・千種ゆり子の絶景桜旅」をスタートし、最近はライブ配信サイトSHOWROOMでも天気予報を配信中。
構成/磯由利子
大学卒業後、ベネッセコーポレーション、ハースト婦人画報社を経てフリーの編集者に。女性誌『25ans』『リシェス』などで、ファッションやジュエリー、取材記事などを手がける。