色彩に欠ける冬の庭やベランダで、ビオラやパンジーの華やかな色を見ると、パッと明るい気分になります。ビオラやパンジーは、春までまだまだ花を咲かせ続けます。

たくさん花を咲かせたいなら、どんどん花を摘んでください。「えっ、せっかく咲いているのに摘んじゃうの?」と不思議になりますよね。今回はその理由を詳しくご紹介します。

ふだん何気なく歩いている道にも花や木々があふれています。その名前を知っているだけで、毎日通る道が何だか新鮮に感じられてきます。この連載では、旬の花や花木の名前やエピソード、ハーブなど身近な植物の生かし方をガーデニングライターが紹介します。

花に与えられた使命は、ちゃんとタネを結ぶこと!

植物はなぜ花を咲かせるのか考えたことはありますか?

理由は一つ、タネを結ぶためです。

なかにはタネを結ばない植物もありますが、ほとんどの植物は花が咲いたあとに受粉をしてタネを作ります。そして、そのタネは風や鳥たちによって運ばれたり、なかには自身で遠くにはじき飛ばしたりして、別の場所で翌年以降に発芽して成長します。

タンポポの綿毛が飛んでいく景色をご覧になったことがありますよね。あれはタネができるだけ遠くに運ばれるように、風に乗りやすい軽やかな綿毛の形状になっているのですが、これは長い歴史のなかで得たタンポポの「生き残り戦略」なんです。

今の場所よりもっとよい環境の場所にタネが落ちれば、さらに生き残りやすくなる。タンポポはちゃんと先のことを考えているのです。そう思って眺めると、「うまく風に乗って飛んでいけ!」と応援したい気持ちになってきます。

花を摘むと危機感を感じて新たに花を咲かせる

▲昨年の12月4日に配信の回で紹介した極小輪のビオラ‘キビのお昼寝’。春が近づくにつれ、花がたくさん咲き出しました。

さて、話をビオラ&パンジーに戻しましょう。ビオラ&パンジーは開花期間が長く、その間にたくさんの花を咲かせます。上手な管理方法のポイントは、花が萎れてきたら摘み取ることとよく紹介されますが、どうして摘み採る必要があるのでしょうか。

ビオラ&パンジーの花は、萎れてくるとタネを結ぶことに力を集中します。そして、タネができれば与えられたミッションは完了です。

ところが萎れてきた段階で花を摘んでしまうと、「えっ、まだタネ作っていないのに、どうするのよ」という危機感を感じるわけです。その危機感から新たな花を咲かそうとする=次々と花が咲く、となるわけです。

花びらの縁がくるっと巻き始めたら、摘み取るタイミング。完全に萎れる前に摘み取るのがポイントです。摘み取るときは、花だけではなく、花がついている茎の根元からハサミでカットしてください。

▲鮮やかな紫とゴールドを思わせる黄色のコントラストが魅力の‘フローラルパワー ゴールデンブルース’。これも花がたくさん咲く品種です。

すてきな花色のビオラ、まだ手に入りますよ!

ビオラ&パンジーは、咲き出しがより早くなるように品種改良されてきているので、ガーデンセンターなどでも秋から苗の販売が始まります。

でも、2月中旬までなら、まだいろいろな品種が並んでいるので、ぜひお気に入りの品種を手に入れて、育ててみてください。

花の市場では、いま少しくすんだ花色がとても人気があります。くすみ系とも呼ばれ、アンティーク感のある大人っぽさがウケているようです。

また、花色では珍しい黒や、メタリックっぽい花色もビオラやパンジーにはあるんですよ。

春に満開になるまではまだまだ時間がたっぷり。いまからでも遅くないので、次々と花を咲かせて楽しんでみてください。

▲ビオラ‘ビビ マンゴーアンティーク’。少しアプリコットがかったピンクがとてもおしゃれな品種です。
▲ビオラ‘ビビ ヘブンリーブルー’は、シルバーがかった淡い水色がとてもクール!これもたくさん花が咲く品種です。
▲花色では珍しい黒いビオラ‘ブラックデライト’。正確には限りなく黒に近い紫なのですが、ここまで黒かったら「ブラック」と呼ぶのも許しちゃう!
▲たくさん花が咲いたら、早めに摘み取って小さなボトルに挿して楽しむのもおすすめ。3日間くらいは花もちします。
▲いろいろな品種を育てると、かわいいミックスアレンジも作れますよ!

Have a try!

  • ガーデンセンターでビオラ&パンジーの苗を探してみる
  • お気に入りのビオラ&パンジーを手に入れる
  • 萎れる前に花摘みして春まで花を咲かせる

取材・文/高梨さゆみ
ガーデニングエディター。子どものころから庭で植物に触れることが大好き。イギリスで本格的なガーデニングに触れ、以後何度も訪英を重ね、雑誌や本などでガーデニングの魅力を紹介。各地の庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。昨年7月に訪ねたスコットランドと北イングランドの庭に感動し、再訪を計画中。